恥じらうように瞳を伏せて、そして次に目を開くとまるで人が変わっ
たかのように淫猥に笑みを浮かべた。その変化に思わず見惚れてい
ると、浅倉は唇を耳元に寄せてゆっくりと囁いた。そして瞬間に真っ赤
になった伊藤を見て満足そうに微笑む。
「まったく……」
伊藤は苦笑して浅倉にキスをした。ゆっくりと指を引き抜いて、熱い
自身をそこに押し当てる。
「後は自分でやって?」
伊藤は浅倉の目をのぞきこんで言った。
「俺が欲しいんでしょ?」
その言葉に浅倉は潤んだ目を向けながら体勢を立て直すと片手を
伊藤自身に添えてゆっくりと腰を落としていった。
「伊藤、くん……あつ……い……」
「大ちゃんも、熱いよ……」
最奥まで伊藤を飲み込んで、浅倉は深い息をつく。ゆるゆると包ん
でくる快楽に体が震える。でも、欲しいのはこんな優しい快楽じゃな
い。浅倉は伊藤の肩に腕を回すとゆっくりと腰を上下させた。内壁を
擦る熱に思わず仰け反ると首筋に噛みつくようなキスをされる。耐え
きれずに声を上げると小さな笑いが伊藤の口から漏れた。
「イイ声」
そのぞくりとするような甘い声に浅倉は肌を粟立たせる。
「もっと聞きたいな……」
そう言って伊藤は首筋のラインを舌先でなめ上げながら浅倉の胸に
手を這わせる。
「あ……だめ……」
「だめじゃないでしょ、こんなイヤラシく締めてくるくせに」
意地悪な言葉と共に軽く腰を揺さぶられて浅倉は息を飲む。その可
愛い仕草に伊藤はもう1度腰を突き上げて胸の突起に舌を這わせてか
ら歯を立てた。瞬間、小さな悲鳴のような嬌声と共に受け入れている箇
所が痛いほどにきつく締まって伊藤は眉をしかめる。このままじゃ自分
が先にイキそうだな、なんてことを考えて苦笑した。そんな思いに気づ
いたのか、浅倉は再びゆっくりと腰を使い始めた。緩急をつけて締め付
けながら伊藤を煽るように。
「……いつこんなやり方覚えたの?」
「イイ?」
いつもとは逆に聞かれて伊藤は苦笑するしかない。
「すげーイイよ……でも」
「……でも?」
「もっとヨクしてあげる」
そう言うと伊藤は浅倉の腰を引き寄せて最奥まで一気に貫いた。その
予期せぬ衝撃に大きく仰け反る白い肢体。それを何度も突き上げるうち
に浅倉は更なる快楽を求めるかのように自ら腰を揺らめかせ始めた。普
段の理知的な姿からは想像もつかないほどの痴態に、きっと本人は気づ
いていない。
「綺麗だよ、大ちゃん……」
腿の上で妖しく蠢く体に熱く囁きかけると、浅倉はうっすらと目を開けて
微笑んだ。
「もっと見て……」
浅倉はそう言って一層激しく腰を使った。嬌声と荒い息づかいと繋がる
箇所から漏れる卑猥な濁音。愛し合うと呼ぶには激しい交わりに互いに
夢中になっていた。
「いと……も……だ、め……」
「あぁ……俺も……」
伊藤は浅倉の体を抱え直して、彼が最も感じる部分に狙いを定めて腰
を打ちつける。やがて浅倉は甘い悲鳴をあげると己を解放し、その瞬間
痙攣するように中の伊藤を締め付けた。
「大ちゃん……っ」
彼の腰を強く抱き締めて、その中に熱い欲望を注いだ。特有の気怠く
て甘ったるい空間の中で伊藤は崩れ落ちる小さな体を支える。そしてゆっ
くりと中から自分を抜こうとすると肩に乗った浅倉の頭が小さく揺れた。
「やだ」
消えそうな声が耳に届いて伊藤は少し体を離した。
「何?大ちゃん」
首を傾げる伊藤に浅倉は頬を擦り寄せて甘えるような声で言った。
「出ちゃ、やだ」
「え?」
「もうちょっと、繋がっていよう?」
新しい年が始まった日だから。これから新しい時間が動き出すから。
今だけは離れていたくない。微かな隙間もないくらいに傍にいたい。こ
れから始まる時を共に歩んでいけるように、願いをかけて。
「大ちゃん」
「ん?」
「今年もずーっと一緒にいようね」
その言葉に浅倉は小さく笑った。
「伊藤くん次第だよ」
「え、俺なの?」
「だってボクはずーっとずーっと一緒にいたいもん」
くすくす笑う浅倉に伊藤も笑みを浮かべた。
「じゃあ俺たちはずーっとずーっとずーっと一緒だね」
額を寄せて笑い合って。そして少しずつ距離が縮まってゼロになる瞬
間が好きだ。
「今年もいっぱいキスしようね」
浅倉の言葉に伊藤はキスを返す。
「いっぱいするのはキスだけ?」
そう言って軽く腰を揺すると浅倉は頬を染めた。繋ぎ合ったままの箇所
から伊藤が再び熱を帯び始めたのが分かったからだ。
「ねぇ、大ちゃん?」
伊藤の囁きに浅倉は緩く締め付けることで応える。
「いっぱい愛し合おう?」
きっと去年よりも好きになるから。だから去年よりもいっぱい愛し合う。
来年は今年以上に。そうやって年を取っていけたら素敵だろう。
「ずーっと一緒にね」
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