伊藤はシーツを握りしめたままの浅倉の手をそっ
と包み込んだ。そしてシーツから引き剥がすと、浅
倉自身へと導いた。
「なっ……」
戸惑いと驚きで手を引こうとするのを許さず、伊藤
は浅倉の手ごと形を現すそれを包み込んだ。
「大ちゃんは見えてないからわかんないでしょ?」
「な、なにがだよっ」
「こんなに今感じてること」
そう言って少し手を上下させる。自慰を思い起こさ
せる感覚に浅倉は首筋まで赤く染めた。
「やめてよっ」
「なんで?」
「なんでって……こんなの、やだよ」
今の自分の姿を思い浮かべると、羞恥に気がおか
しくなりそうだ。見えない分、恥ずかしさも増す。こん
な醜態、見られたくないのに。
「ねぇ、大ちゃん」
「………」
「1人でヤる時って、どうやってシテるの?」
「なっ……そんなの、してないよっ」
低く甘い声で次々と浴びせられる言葉に浅倉はま
すます赤くなっていく。それに呼応するかのように、
肌に残る紅い痕も色を増して色香を漂わせる。
「してないの?ホントに?離れている間も、俺を想っ
てヤッてくれないの?」
「……しない、もん」
「ふーん……じゃ、教えてあげる」
「なにをだよ!」
伊藤は浅倉の指に自分の指を絡めると、ゆっくりと
浅倉自身に這わせた。
「俺がどうやって大ちゃんを気持ちよくさせてるかをね。
そうすれば俺がいない時でも、俺を思い出すでしょ?」
「だからこんなことしないって……やっ、やだってばっ」
ゆっくりと動き始めた手に大きく首を振って抵抗しよう
とすると、目を覆った手で強く頭を抱き締められる。
「やめて、よ……」
愛撫とも自慰とも感じられる行為に心が竦む。しかし
伊藤は手を止めようとはしなかった。
「大ちゃんはね、ここを強く擦るとすごいイイみたいなん
だよね」
「やっ、あ……」
「ね?それから、こういう動きも好きなんだよね?」
手の動きと言葉に犯されて、翻弄されて、浅倉はもう
何も考えられなくなっていた。ただ、早く熱を放ちたかっ
た。それで解放されるなら、なんでもする。
……こんなのは、快楽じゃない。
「大ちゃん?」
突然自分から手の動きを進め始めた浅倉に気づい
て伊藤は少し驚いた声をあげた。でも、もうどうでもい
いと思った。早く、解放されたい。
程なくして浅倉は小さな悲鳴と共に自身を放ち、そし
て両の目から零れる熱いものが伊藤の手を濡らした。
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